延喜式内 高知坐神社(たかちにますじんじゃ)

延喜式内 高知坐神社(たかちにますじんじゃ)

皆さんごきげんよう。

やはり持ち込み作り直しのご依頼。四万十市の隣、宿毛市にある高知坐神社(たかちにますじんじゃ)の宮司さんからです。
高知坐神社は平安時代に纏められた『延喜式』の巻九・十の延喜式神名帳(延長5年(927年)当時の全国神社一覧)にも掲載されている由緒ある神社。
由緒あると言っても地元以外ではそんなに有名ではないので、参拝者は殆ど地域の人達。だから御朱印を貰う方は今まで居られなかったそう。でもやっぱりインターネットの時代だね。隠れ里の古社をめぐって御朱印集めをする旅人がこの数年少しずつ増えてきたんだって。
これまではそれなりに簡素に書いていたんだけど、折角来てくれるんだから良いハンコでも押したいなと思って神社仲間のつてを頼って当店に相談に来てくれた、という次第。

宮司さんは気さくな方でした。
「社務所の引き出しには古くてデカいのがあるけど、あんまり綺麗に押せないからこれを参考にして、新しいのを作ってもらえんかね?大きいから小さくできる?図柄が面倒なら中の文字だけでもいいよ。ところでなんて書いてあるの?」
「えっとこれはですね、右から読むので『恩頼』です。」
「じゃ恩頼だけでもいいから頼むよ。全然つかないのこれ。」
「付かないですか?押してみましょうか?…あら、良いですね!太陽と月ですよ。細かいですね!素晴らしい!」
「おお良いね!じゃこれも彫れる?難しくない?でも大きいと高くなるでしょ。」
「いやいや。付くんだからこれ使いましょうよ。勿体ない。大分古いんでしょう?」
「多分昭和の初めとか大正とかかなぁ…??」
「じゃあ、尚更使いましょうよ。もうこんな印材なかなか手に入らないですよ。技術だって優れているし。多分宮司さんの持ってる朱肉が小さすぎるだけだと思いますよ。」
「そお?新しいのが良いかなと思ったけど。」
「うちで彫り直しすれば何万円も頂くことになりますけど、ほら、カタログ見てください。大きい朱肉なら数千円ですよ。財布にも優しいし、そうしましょう。」
「そうねー。じゃあその数千円コースで作り替えお願いしようかな。」
「いやそうじゃなくて!数千円と言うのは朱肉の買い替えのことです!作り直しは数万円!この直径10センチのなら余裕で捺印出来ますよ。あと、キレイな押し方も伝授しますから、それでやってください。これ使わないとすっごく勿体ないです。」
「そうかね。押し方も教えてもらえるならそうしようか。」
「絶対その方が良いです。参拝者さんも喜びますよ。」

というわけで、今回は作り直しはせずに朱肉の注文だけ、ということになりました。
当然新規発注なら売り上げが見込めますが、当店は何でもいいからお金が入れば良し、とはしません。
良いものは残す。
皆さん是非過去の職人さんが一生懸命丁寧に作った仕事をご覧になりに、高知県宿毛市平田町戸内4233の『高知坐神社』までお出かけください。
素敵な宮司さんがお出迎えしてくれますよ。

ではまた。