岩牡蠣を食べながら思い出したこと。

岩牡蠣を食べながら思い出したこと。

友人宅へ遊びに行っていた妻が夜、岩牡蠣を大量に貰って帰って来た。
この日は一人だったので早めに取った夕飯は既に終わり、これから調理するのは面倒なので簡単に蒸し焼きにして食った。
食いながら昔、友人達と福井の海に岩牡蠣漁にいったことを思い出す。
愛知に住む友人から電話があり、福井の海で漁家から一日漁業権を借りて牡蠣漁をしないかと言うのだ。そこは原発から出る温かい排水で岩牡蠣が良く育っていて、飽きるほど取り放題が出来るらしい。その頃東京にいたので新幹線で名古屋まで行き、そこで友人たちと合流してレンタカーで福井へ。港へ到着したら漁業協同組合の事務所へ行って漁業権を借り、小さな船をチャーターして沖合の小島へ運んでもらった。船は夕方迎えに来てくれるので、俺たちは一日この岩礁で牡蠣漁をして過ごすのだ。
持参した装備を付けて皆、勇躍海に飛び込む。海中には驚くほど大きい牡蠣がにゴロゴロ転がっていた。岩牡蠣と言うから岩にくっ付いているのかと思っていたが、そこら中にばらまいたように転がっている。それをつかんでは腰の網に放り込むだけ。網一杯に詰め込んだら岩に戻り、用意してきたカセットコンロでひたすら網焼きにして食った。早朝から漁に出て、朝、昼飯に岩牡蠣、オヤツに岩牡蠣、ついでに夕飯も岩牡蠣と言う贅沢極まり無い一日。
帰りの車内では真っ赤に日焼けした身体が痛い痛いと言いながらみんな満足そうだった。
勤め先のレストランにも、お土産に発泡スチロールの箱一杯に詰めて持って帰って、賄いに使えと若い奴に渡したが、そいつが本当にバカで使えない野郎だったから、全部腐らして駄目にされてしまった。
あれは17年前の夏のこと。